思想と矛盾とオレ

企業経営の目的とは何だろうか。

儲けるため?人のため?客のため?従業員のため?

会社によって大きく違うだろうし、どれも間違っていない。どんな理由があってもいい。

この資本主義社会においては、会社は株主のために存在するというのが一般常識である。株主に利益を分配するために、従業員を使って利益を上げる。そして経営者は株主から利益を得るのである。これが株主資本主義である。

しかし、近年潮流が変わってきた。会社とは株主だけではなく、ステークホルダー全員のために存在するという考え方である。これをステークホルダー資本主義というが、会社とは関わる人(株主、客、従業員、取引先、地域自治体、社会全体など)全員を幸せにするために、人が作り出した仕組みであるという考え方が一般的となってきている。

昨今の行き過ぎた株主第一主義から社会全体が変化してきているのである。

 

共通善という言葉をご存知だろうか。

共通善とは「社会全体にとって良いこと」という意味がある。

この共通善こそが企業の存在理由なのである。しかし、現在存在する企業が全て共通善という概念を持つ企業ばかりではない。

企業とは共通善に尽くし、世界をよりよくすることを目指す。この目的を達成するため に、全体の利益を高めるような制度や政策を示すことが企業の目的であるのにも関わらず。

 

では、共通善を実現するための企業はどのように生まれるのだろう。

良い企業は創業者の「経営哲学」から生まれる。これは単純に創業者の考える「どんな社会がいいか」というものである。無知のベールと言えばわかりやすい。

経営哲学とは無知のベールから生まれる理想の社会、つまり創業者の目的である。

 

経営哲学から繋がるのが、「経営思想」であり、これは手段とも言える。

この経営思想は主に二つに分かれる。

①利己

経営者は個人として、市場の競争環境において資源を無駄にせず価値を生み出し、雇用を生むということである。簡単に言えば、とにかく競争に勝って、儲けなければならないということ。

②利他

市場競争には欠陥があり、自制によってルールや規制を守らなければならない。つまり、人のためになること以外やってはいけないということ。

 

経営哲学から経営思想へと進み、それが企業の理念、ビジョン、そして戦略へと繋がっていく。経営哲学と経営思想は普遍的なものであり、企業の基盤となる。

しかし、利己と利他の追求を行うと必ず矛盾が生じる。

企業とは、競争に打ち勝ち続けて利益を得なければ生き残れない。もっと言えば競争に勝てない企業とは社会悪と言える。

だが、勝利だけを追い求めると利他の追求が厳かとなってしまう。

どうすれば両方を追求できるのだろうか。

 

企業は儲けなければ生き残れない。儲けることは絶対条件である。同時に顧客、従業員、取引先への貢献を同時追求しなければいけない。

この矛盾の許容こそが経営であり、二者択一は経営者には不要なのである。

経営者は儲けることが一番でありながらも、最後はステークホルダーのためになる選択を行うことができて初めて一流なのである。

 

しかし、世の中には三流の経営者が多く存在する。

お客様のため、従業員の幸せのため、社会のため、などと立派なビジョンを掲げていても、利己の追求しかできていない経営者。

口先だけは立派なことを唱えていても、周囲のステークホルダーは見抜いているだろう。

そんな企業にこの先はない。

心当たりのあるサラリーマンは自分のキャリアについて見直しましょう。

 

ただ、普遍の哲学や思想を持っていても、ステークホルダーにしっかりと伝えることができていない企業も存在する。そんな企業は自己認識を改めて、インターナルマーケティングに力を入れよう。

 

これ以上書くのがめんどくさくなってきたので、結論。

皆さんは自分の働く企業や経営者は、経営哲学や経営思想を持っているのかしっかりと見抜きましょう。